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わたしの代わりに空が泣く。

有益な情報は含んでおりません。

今月初めのこと。

 

慕っていたマネージャー(36)が遠くに行くことが決まった。

 

変な人だった。

話す相手には「てめぇ」っていう癖に、自分のことは「○○さんはさ、」と言う人だった。

 

とてもとても、賢い人だった。

老舗のマンモス企業の出世コースではちょっと考えられないくらいの早さ(20代)でマネージャーになった。異例だ。本当に本をよく読む人で、その知識の吸収率も凄かった。

 

私が初めて彼の下で働くことになったのは去年の春で、あまりにも仕事の振り方が無茶振りすぎて始めは困った。

元々、仕事の無茶振りや、部下へのあたりがキツいことで有名な人だった。噂しか聞いたことがなかったから実際どうなんだろうと思っていたけど、実際下についてみて、やっぱり無茶多いなぁと思うことが多かった。実際、最初は私が先に限界を迎え、部長に泣きつく始末だった。

 

でも私は彼のことが上司としてとても好きだった。尊敬していた。自分はあんな風には絶対なれない。努力がどうこうではない。人間の根本のはなし。

 

出来損ないの私のことを認めてくれた。

『お前はちゃんと出来ると思ってる。その力があると思う。もっと自分の力を信じなさい。』

 

彼は優しかった。無茶苦茶やっているように見えて、実際は人の表情を見て全てを察知することができる人だった。そして彼は男性には厳しく、女性には優しかった。

私がいつも話しかけると、少し臆病になったような顔付きをしていた。いつも、何だか申し訳なかった。

 

カラオケに行くと少年?子ども?のようにはしゃいで、マイクを持って踊っていた。スピードのWhite loveやSuperflyのBeautifulを高音で歌い「やっぱ無理だわー」と笑って言っていた。

マイケルジャクソンの「ぽう!」を連呼するときもあるらしいと噂で聞いて、笑った。

 

そういえば前に彼が出社するやいなや

「あっ!俺今日さー、浅瀬の結婚式でスピーチする夢見たんだよなー。」と大きな声で言っていて、島の人たちにまる聞こえで恥ずかしかった。でも私はそれがいつか正夢になったらいいのになぁと思ったのだった。

 

 

彼は遠くに行ってしまうのに、彼はそのことを私には何も言わなかった。何も言わずに行ってしまった。

私は正直、バカヤロウと思ったし文句を言いたかった。せめて「俺このプロジェクト抜けるんだ」と自分で言って欲しかった。でもメールは打てなかった。

 

サラリーマンであるというのはこういうことなんだなとふと思い出したりする。逆らえない指令、定期的に行われる異動、静かに行われる左遷。

今回の場合、彼の上からとんでもない力が働いて、彼の能力を買っているお偉い方々が遠くに呼びつけてこうなったらしい。

 

彼と一緒に仕事が出来て良かった。

彼が心の底から仕事を楽しんでいるのを横で見られて良かった。

そう思ってまた次に進むのだ。

 

今度会えたらいつか

「私はあなたと一緒に仕事ができて嬉しかったです。私はとてもとても、淋しいです」

と言ってやろうじゃないか。